小石川の薬園・養生所と近代植物学発祥の地
植物園の魅力を先日知った亀さんは、今度は、「小石川植物園」(注1)を訪ねました。東京に来て40年間、行こうと思っていて、行っていなかった所です。
ここは、日本最古・世界でも有数な歴史の植物園で、江戸幕府の「小石川薬園」を起源とし、近代近代植物学発祥の地です。また、江戸時代には、貧困者のための施療所「小石川養生所」が置かれ、また、青木昆陽が甘藷の試作を行った所です。
約16.2haの園内には、研究的な施設(温室、植物分類標本園、薬園保存園など)、歴史的な施設のほか、梅林、サクラ林などの林、芝生広場や日本庭園もあり、市民のレクレーションにも活用されています(上の写真下段中央・右)。(温室は公開中止中。)
亀さんが、関心があったのは、「精子発見のイチョウの木」(注2)、小石川養生所や薬園施設の跡などでした。高校で習った生物・日本史の現場への関心からです。
植物園入口を入るとすぐ、精子発見のソテツがあり、「アレ?」と思ったら、それは研究に用いたソテツ(鹿児島県立博物館内に現存)の分株でした(上の写真下段左)。「精子発見のイチョウ」の木は、園内中央に現存していました。意外にも、雌雄異株の雌株で、銀杏が鈴なりでした。どうも、精子の発見は、雄株の雄花からではなく、雌株の若い種子からだったようです(上の写真上段)。
時代小説やドラマにもよく出てくる養生所の痕跡は「旧養生所の井戸」(写真左)だけで、薬園の跡の「乾薬場跡」も立入り禁止で、外から見ても良く分かりませんでした。小さな「薬園保存園」(写真右)がありましたが、あまりパッとしませんでした。
想定外に、亀さんが、感激したのは、「旧東京医学校本館」(写真左、注3)と日本庭園と秋の花々でした。
「旧東京医学校本館」は、国の重要文化財で、最初は、東京医学校が小石川養生所の跡に建てられていたのかと思いましたが、昭和44年に東大本郷構内から移設されたものでした。
また、日本庭園は、5代将軍綱吉(いわゆる犬公方)の幼時の居邸の白山御殿と旗本・蜷川家の屋敷跡の庭園の名残りで、江戸時代の代表的な庭園の一つだそうです。特に、「旧東京医学校本館」のテラスから見た日本庭園は、素晴らしいものでした(写真右)。
なお、秋の花々などは、次回以降にご報告します。(記入者:亀さん)
(注1)「小石川植物園」は、正式には「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」といい、植物学の教育・研究目的の施設です。小石川植物園のHP:http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/index.html
(注2)それまでは、種子植物はすべて花粉から伸びる花粉管で受精すると思われていましたが、19世紀末、イチョウとソテツから精子が発見され、世界の学界に大きな反響を呼んだ。
(注3)東大総合研究博物館小石川分館(旧東京医学校本館)のHP:http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/annex.html
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コメント
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こんにちは。
小石川植物園はしばらく行っていません。秋の紅葉が綺麗なので11月には行ってくるつもりです。
投稿: シゲ | 2008年10月18日 (土) 17:02
小石川養生所といえば、赤ひげですね。
今でも、ちゃんとその場所が残っているのは、不思議な気がします。
東京は意外に緑が多いと感じます。
公園や庭園などが、たくさん残っているからでしょうか?
投稿: ubazakura | 2008年10月18日 (土) 18:20
> シゲさんへ
紅葉もきれいなんですか?
今回は行かなかったのですが、植物園の案内図を見ると、雑木林もあるようなので、そうなのかな?
東京は都会ですが、結構、庭園や神社で紅葉の名所もあるようですね。
投稿: 亀さん | 2008年10月18日 (土) 20:43
>ubazakuraさんへ
東京には、結構自然豊かな庭園や公園があります。
東京に自然や歴史的なものが残っているのは、明治政府のときに、将軍家や大名の屋敷などが没収され、大学用地や官有地や財閥家の庭園・別邸に転用されたからです。
今の都営の庭園(六義園、古河庭園、旧岩崎邸など)は、ほとんど財閥家の庭園・別邸だったところです。
投稿: 亀さん | 2008年10月18日 (土) 20:51